はじめに
Jack Herer は、1994年に Sensi Seeds が作出した Haze × Northern Lights #5 × Shiva Skunk の三重交配株であり、近代サティバの“基準点(Reference Point)”として世界的に引用される代表品種です。鋭い覚醒・集中・クリアな精神性を保ちながら、Skunk と NL#5 による安定性も併せ持つことで、後の Amnesia Haze や Super Lemon Haze の基盤となりました。
基本情報(Complete Profile)
- 品種名: Jack Herer
- タイプ: サティバ優勢ハイブリッド(約60–70% Sativa)
- 交配: Haze × Northern Lights #5 × Shiva Skunk(Sensi Seeds 公開構造)
- THC: 17〜24%(平均 20〜22%)
- CBD:
- CBG: 0.3〜0.8%
- 主要テルペン: テルピノレン、β-カリオフィレン、ミルセン、リモネン
- フレーバー: 柑橘、白胡椒、松脂、ハーブ、土
- 効果: 覚醒・集中・創造性・クリアな多幸感
- 誕生: 1994年(Sensi Seeds)
- 受賞: High Times Cannabis Cup(医療部門含む)複数入賞
- 文化的位置づけ: 近代サティバの代表株/Amnesia・SLH の母体系統
- 栽培難易度: 中〜上級者向け
- 開花期間: 9〜11週
- 収量: 450〜550 g/m²
遺伝構造(Genetic Structure)
Jack Herer は以下の三重交配で構築されています:
- Haze: 鋭い覚醒・柑橘スパイス・テルピノレン支配
- Northern Lights #5: 樹脂量・構造安定性・収量向上
- Shiva Skunk: 香気の厚みと生産性の補強
この構造により、Haze の覚醒 × NL#5 の安定 × Skunk の厚みを実現した初期の成功例となった。遺伝学的には F1〜F2 中間 の構造で、ヘテロ性を保ちながらも表現型の再現性が高い。
化学的プロファイル(Cannabinoid & Terpene Profile)
- THC: 17〜24%
- CBD:
- CBG: 0.3〜0.8%
- 総テルペン量: 1.5〜2.1%
主要テルペン:
- テルピノレン: 柑橘・白胡椒・ハーブ。覚醒の中心。
- β-カリオフィレン: スパイスと樹脂の骨格。
- ミルセン: ハーブ香・軽いボディ緩和。
- リモネン: 柑橘の明るさと気分向上。
このバランスが「鋭さがありながら不安が出にくい覚醒」を形成している。
香りとフレーバー(Aroma & Flavor)
Jack Herer の香りは、ヘイズの柑橘スパイスに Skunk と NL#5 の土壌・樹脂が重なった多層構造。
- トップ: レモンピール、白胡椒、ハーブ
- ミドル: 松脂、土、微スパイス
- ボトム: 樹脂、木質、軽い甘み
効果と体験(Effects & User Experience)
- 覚醒: 鋭い集中・思考のクリア化
- 精神作用: 創造性の活性化・爽快な多幸感
- 身体感: NL#5 による軽いボディリラックス
高THCだが不安が出にくい理由は、テルピノレン × リモネン × β-カリオフィレン の三点調整による神経系の補正作用が影響していると考えられる。
医療領域での応用(Medical Applications)
海外医療市場の使用報告:
- 軽度〜中等度の抑うつ: 気分の明度向上(テルピノレン・リモネン)
- 慢性疲労: 活力向上・集中補助
- ストレス性緊張: コルチゾール反応の緩和補助
- 軽度の頭痛・神経痛: 体験ベースの報告あり
※ただし臨床試験データは限定的で、効果は個体差が大きい。
栽培特性(Cultivation Characteristics)
- 栽培難易度: 中〜上級
- 開花期間: 9〜11週
- 収量: 450〜550 g/m²
- 特徴: ヘイズらしく伸びやすいが NL#5 が構造を安定化
湿度管理は必須。強光下ではテルピノレンが増え香りがシャープに。
文化的背景と評価(Cultural Impact)
Jack Herer は 1990年代後半のサティバ文化の中心であり、以下の功績を持つ:
- ヘイズを一般市場に浸透させた初期株
- 室内栽培に適応した最初のヘイズ系成功例
- Amnesia Haze・SLH の基礎となる系統構造を確立
現在でも “古典サティバの基準点” として引用され、研究者・ブリーダーから高い評価を維持している。
🧬考察ノート|Jack Herer における近代サティバ遺伝学の核
1. Haze 遺伝子の覚醒性を「使える形」にした歴史的成功例
オリジナル Haze は高ヘテロ性で扱いにくく、長花期・不安定・低収量という欠点があった。Jack Herer はここに NL#5 と Shiva Skunk を掛け合わせて暴れを制御し、実用的な覚醒株へ昇華した。
2. 非IBLだが再現性が高い「F1〜F2 中間安定モデル」
Jack Herer は完全固定ではないが、以下の三形質が高再現性:
- 柑橘スパイスの香気構造(テルピノレン)
- 鋭い覚醒と低不安性
- 10週前後に収まるヘイズ花期
3. ケモタイプ:THCAS優勢 × テルピノレン支配のサティバ構造
THCAS の転写活性が高く、CBDAS はほぼ沈黙している。
テルピノレン・リモネン・β-カリオフィレンの三点協調が、混乱しにくい覚醒感を生む。
4. サティバ文化への影響
Jack Herer は以下の文化的意義を持つ:
- 「近代サティバの味と体感」の基準を明確にした
- Amnesia Haze/Super Lemon Haze の母体系統として遺伝拡散
- 室内ヘイズ栽培の普及に貢献
【総括】
- Haze × NL#5 × Skunk を黄金比のように整理した歴史的ストレイン
- サティバ覚醒・集中・文化性のすべてを兼ね備える
- 2025年時点でも“基準点として機能する稀有な株”である
本考察は Sensi Seeds 公開情報、LeafWorks(2024)、Cannabinoid Genomics Archive(2025)の公開データを基に再構成。
日本国内での注意喚起
本記事はカンナビスの品種学・遺伝学・文化研究を目的とした情報提供であり、違法行為を助長する意図は一切ありません。
日本国内では大麻の所持・使用・栽培・譲渡は大麻取締法により厳しく禁止されています。絶対に行わないでください。
合法地域での利用においても、依存・認知機能低下・精神的不安定化などのリスクが存在します。利用の際は必ず現地法と医療指導を確認してください。
本サイト「Cannabis Strain Wisdom」は教育・研究目的で運営されています。