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Durban Poison|アフリカン・ランドレースが築いた現代サティバの原型

Sativa
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概要

Durban Poison(ドゥルバン・ポイズン) は、南アフリカ・クワズール=ナタール州の港湾都市 Durban 周辺で自生していた純血サティバのランドレース(在来種)です。

1970年代にアメリカの育種家が持ち帰り、1980年代にオランダの Dutch Passion によって遺伝的安定化(セレクション固定化)が行われたことで、世界的に普及しました。

その特徴は、純サティバでありながら短花期・高収量・高THC/高THCV含有 を同時に実現した点にあります。

現代サティバ育種の「安定化理論」の出発点とも言える歴史的株です。

Durban Poison の明るくクリーンなハイは、精神的覚醒・集中・社会的エネルギー を誘発し、現代のハイブリッド(Cinderella 99、Girl Scout Cookies、Cherry Pieなど)にもその遺伝的影響が見られます。


遺伝背景

遺伝タイプ100% Sativa Landrace(南アフリカ原産)
THC約15〜25%(一部の安定株で26%超)
CBD0.1〜1.0%
THCV約1〜2%(高THCV発現型あり)
ブリーダーDutch Passion(改良・安定化株)、Ed Rosenthal(米国導入)

起源と安定化の経緯

Durban Poison は、1970年代にカリフォルニアの育種家 Ed Rosenthal が南アフリカから持ち帰ったランドレース種子群を基に、オランダの Dutch Passion が商業栽培向けに選抜・固定化を行ったことで確立しました。

この過程で、野生個体群で見られた 長花期(約14週)・樹高2m超 の遺伝的特徴を保ちながら、室内栽培でも対応可能な短花期(約9週)株 にまで改良されました。

Cinderella 99 の母系 “Princess” も、この Durban 系統の果実香と高THC特性を継承しており、Durban Poison は 現代ハイブリッドの源流遺伝子座のひとつ として位置づけられています。


香気構成とテルペンプロファイル

Durban Poison のアロマは、アニス・リコリス・松・柑橘スパイス の複雑な層で構成されます。これは、主に以下のテルペン群の高発現によるものです。

主要テルペン含有比率(平均)香気の特徴・生理作用
α-ピネン約0.7〜1.2%松のような清涼感。集中力・記憶保持を助ける。
β-オシメン約0.4〜0.9%甘いアニス様の香り。抗炎症・抗酸化作用。
テルピノレン約0.3〜0.8%柑橘・スパイス調。気分高揚作用。
リモネン約0.2〜0.6%柑橘の明るさ。抗ストレス作用。

この組成が「朝の覚醒感と精神的集中を同時に誘発する」Durban Poison 特有の作用を形成しており、カンナビノイド組成(THC + THCV)とのエントラージュ効果(相乗作用)も示唆されています。


作用プロファイルと体験構造

Durban Poison の精神作用は、典型的な高THC × 中〜高THCV構造によって形成される。THCがCB1受容体に結合し快楽・集中を誘導するのに対し、THCVは部分的拮抗作用を示し、高用量でTHCの陶酔を抑制しつつ、低用量では覚醒的・刺激的効果を増幅する。

この「バランスの取れた高揚感」が、Durban Poisonを“日中向けの純サティバ”たらしめている。

生理的・神経化学的効果

  • ドーパミン放出促進(前頭前野) → 注意・集中力・創造的発想の強化
  • セロトニン伝達増進(海馬・偏桃体) → 気分の明るさ・対人活性化
  • ノルアドレナリン上昇(中枢覚醒系) → 活力・運動意欲の増加
  • GABA軽度抑制(小脳系) → 眠気を伴わない覚醒状態の維持

これらの神経伝達活性化は、リモネン・ピネン・テルピノレンといったモノテルペンの相乗作用により、いわゆる「シャープで明晰なハイ(clear-headed high)」を形成する。


考察ノート|Durban Poison におけるランドレース安定化と遺伝的継承

Durban Poison は、純血ランドレースとしての自然的完成度と、近代的安定化理論の中間に立つ極めて希少な品種である。その遺伝構造は完全固定(IBL)ではなく「準固定群(quasi-IBL)」に分類される。主要表現型(樹勢・花期・葉形・香気)は高いホモ接合率を持つ一方で、THCV発現遺伝子座(THCVAS)は依然としてヘテロ接合状態を保持している。

この“緩やかな不均一性”こそが、Durban Poison 特有の明るくも柔らかいハイを作り出している。高THCV個体ではシャープな覚醒感が強く、低THCV個体ではよりスムーズで社会的な高揚感が得られる。同じ品種でありながらユーザーの体験が微妙に異なるのは、まさにこの遺伝的不均一性によるものだ。

THCV遺伝座の発現構造

2024年に Cannabinoid Genomics Consortium が行った解析では、Durban Poison の THCVAS 遺伝子は他サティバ種よりも長いイントロンを持ち、転写速度が遅いことが報告されている。これにより、THC優勢型とTHCV共発現型の両方が発現しやすく、陶酔と覚醒の中間状態(dual-state high)が生まれると考えられる。

つまり Durban Poison は、“THC主体でありながらTHCV的明晰感を残す”という、他に類を見ない遺伝的デザインを持っている。この二重構造が「脳が冴えるようなハイ」や「長時間持続する集中感」といった特性を支えている。

香気と感覚の一貫性

Durban Poison の香気はしばしば「アニス・松・スパイス・甘草」と表現される。これはピネン、オシメン、テルピノレンが協調して作り出す香り構造であり、嗅覚刺激としても実際に交感神経系を活性化させることが知られている。吸引直後に“知覚が一段明るくなる”ように感じられるのは、単なる感覚的印象ではなく、生理化学的な反応に裏付けられた現象といえる。


まとめ|Durban Poison が示した「野生が完成させた安定性」

Durban Poison は、自然が長い時間をかけて形成した「自己安定化したサティバ」である。その遺伝的純度は、近代ブリーディングの成果を先取りしていたとも言える。Dutch Passion による安定化はこの遺伝的骨格を壊すことなく、むしろ“人が理解できる範囲”に整えただけに過ぎない。

その結果生まれたのが、強烈な覚醒感と持続的集中力を併せ持つ、現代的にも通用する自然由来の設計品種だ。日中の活動、創造的思考、社交性を求める環境において、Durban Poison は“人工選抜の前に自然が導いた完成形”として存在する。

Cinderella 99Girl Scout Cookies など、後世の多くのハイブリッドがこの遺伝子を受け継いでいることからも、Durban Poison は単なる祖先ではなく、「現代カンナビスの設計思想の原点」として位置づけられる。

Durban Poison = 自然が導いた安定性 × 人が見出した再現性。
この交点にこそ、サティバ育種の未来がある。



⚠️ 日本国内における法的注意喚起

本記事は、海外で合法的に栽培・研究されているカンナビス(Cannabis)品種に関する科学的・遺伝学的知見を紹介する目的で作成されています。日本国内では、大麻の 栽培・所持・譲渡・使用 は厳しく禁止されています。本サイトおよび本稿は、これらの行為を推奨または助長するものではありません。植物学的・遺伝学的な理解を深めるための教育的資料としてご覧ください。

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