はじめに
RS11(Rainbow Sherbert 11) は、Zkittlez × Pink Guava × OZK(OG × Zkittlez)の三重交配によって誕生した、現代を代表する第四世代ハイブリッドである。
カリフォルニアの Doja Pak と Wizard Trees により生み出され、2023年以降、米国・欧州市場の高級カンナビスセクターを席巻した。
Runtz 系譜を継承しつつも、より複雑な香気構造と高い遺伝安定性を併せ持つことで、研究・文化の両面から注目を集めている。
RS11 は “Rainbow Sherbert” ファミリーの中でも特に完成度の高い系統であり、
Zkittlez 由来のトロピカルフルーツ香、OG Kush 系の燃料系トーン、そして Pink Guava の酸味ある甘香が重なる。
この Pink Guava は Guava × Gelato に由来し、Zkittlez と姉妹構造を持つため、
結果として RS11 は Gelato と Zkittlez という2系統の血統を再び交差させた形となっている。
そのため香気は極めて滑らかで、甘香からガス香へのグラデーションが自然に溶け合う。
この香気と陶酔は「多幸的覚醒(Euphoric Clarity)」と形容され、
従来のスイートハイブリッドとは一線を画す体験をもたらす。
基本情報(Complete Profile)
- 品種名: RS11(Rainbow Sherbert 11)
- タイプ: ハイブリッド(Indica Leaning Hybrid / 約55–60% Indica)
- 交配: Zkittlez × Pink Guava × OZK(OG Kush × Zkittlez)
- THC: 24〜30%(平均 27%)
- CBD: <1%
- CBG: 0.6〜1.1%
- 主要テルペン: リモネン、β-カリオフィレン、リナロール、テルピノレン、オシメン
- フレーバー: トロピカルキャンディ、ディーゼル、甘酸フルーツ、樹脂ノート
- 効果: 多幸的覚醒(Euphoric Clarity)、集中 × 高揚、穏やかな鎮静
- 栽培難易度: 中〜上級者向け
- 開花期間: 8〜9週(屋内)/10〜11週(屋外)
- 収量: 430〜520g/m²(屋内)
- 誕生: Doja Pak × Wizard Trees(2022)
- 位置づけ: 第四世代ハイブリッドの基準点(4th Gen Hybrid Core)
遺伝構造(Genetic Structure)
RS11 の遺伝背景は以下の通り:
- 母系: Pink Guava × OZ Kush (Zkittlez × OG Kush)
- 父系: Zkittlez (Grape Ape × Grapefruit)
この三重交配により、Zkittlez のテルペン支配領域が全体の約 60〜65% を占め、
OG Kush 由来の β-カリオフィレン および リモネン がボディ面の鎮静を補う。
Pink Guava は リナロール 発現を強め、香気の“滑らかさ”と“甘酸の均衡”を付与する役割を担う。
RS11 は F2.5 構造 に分類される複合ハイブリッドであり、
F1 の異種強勢 (heterosis) と F3 の安定性の中間を狙った設計思想に基づく。
表現型の分離は少なく、樹形・花密度・香気の再現率は 80〜85% とされる(CGA 2025 データ)。
化学的プロファイル(Cannabinoid & Terpene Profile)
- THC 含有量: 24〜30% (平均 27%)
- CBD 含有量: <1%
- CBG 含有量: 0.6〜1.1%
- テルペン総量: 約 2.5〜3.0% (高濃度クラス)
- 主要テルペン: リモネン、β-カリオフィレン、リナロール、オシメン、テルピノレン
RS11 のテルペン分布は極めて均一で、環境変動に対しても安定している。
平均値としてリモネン 0.8〜1.2 %、β-カリオフィレン 0.6〜0.9 %、リナロール 0.4〜0.7 %、テルピノレン 0.3〜0.5 %。
この“偏りの少ない分布”が、香気の均一感と安定したフレーバー再現性を支えている。
香りの構成はトロピカルフルーツ調 (Zkittlez 由来) とガス香 (OG 系) に加え、
Pink Guava 由来の酸味が混ざる三層構造。
特筆すべきは テルピノレン の安定発現で、これは従来 Runtz 系では希少だった成分である。
リモネン と テルピノレン の協調は神経報酬系における ドーパミン 分泌促進を誘発し、
高揚と集中を伴う覚醒的ハイを特徴づけている。
香気と感覚特性(Aromatic & Sensory Characteristics)
RS11 の第一印象は「トロピカルキャンディの甘香」と「軽いディーゼルガスノート」の共存である。
吸入直後に広がる果実香は Zkittlez の特徴を色濃く受け継ぎ、呼気の終盤で OG 系由来のスパイスと樹脂香が立ち上がる。
この二重構造が「キャンディ × 燃料」という一見相反する感覚を同時に成立させている。
Pink Guava の酸味とリナロールの柔らかいフローラルノートが、香り全体を滑らかに中和しており、
鼻腔を通過する際の刺激が少なく、後味に丸みがある。
特に加熱時の温度変化に対しても香気劣化が少なく、テルペン揮発プロファイルの安定性が高いのが特徴だ。
体感としては「高揚しながらも落ち着く」二面性を持ち、
リモネンが精神的エネルギーを引き上げ、β-カリオフィレンが神経抑制を整える。
このバランスは Runtz よりも穏やかで、集中力を要する作業や創作時に向いている。
栽培特性(Cultivation Characteristics)
- 栽培難易度: 中〜上級者向け
- 開花期間: 8〜9 週(屋内)/10〜11 週(屋外)
- 推奨環境: 温度 22〜26℃、湿度 45〜55%
- 収量: 屋内 450〜550g/m² / 屋外 最大 650g/株
RS11 は Zkittlez の遺伝を色濃く受け継ぐため、湿度と風通しの管理が重要である。
過湿環境下ではボトリチス(灰色カビ)のリスクが高まるため、
低湿度・強光環境でトリコーム発達を促すのが理想的である。
トリミング時の香気損失を防ぐため、乾燥温度を 18〜20℃、湿度を 55% 前後に保つことが推奨される。
この環境下ではテルペンの揮発を最小限に抑え、RS11 特有の甘香を保持できる。
文化的背景と評価
RS11 は 2022 年に Doja Pak、Wizard Trees、Deep East により市場に登場し、
瞬く間に「Z世代ハイブリッド」の代名詞となった。
米国西海岸では 2023〜2024 年にかけて “exclusive drop(限定流通)” として話題を呼び、
ニューヨークやロンドンのディスペンサリーでも限定的に取り扱われている。
消費者評価の多くは “Runtz の進化版” とされるが、
香気構造の精緻さ、トリコーム密度の高さ、フェノ安定率のいずれも Runtz を上回る。
そのためブリーダーや研究者の間では、RS11 を「第四世代ハイブリッドの完成形」と位置づける声もある。
🧬考察ノート|RS11における第四世代ハイブリッド設計の遺伝的基盤
RS11(Rainbow Sherbert 11) は、現代ブリーディング理論における「第四世代ハイブリッド(4th Gen Hybrid)」の到達点として位置づけられる。
これは単なる三重交配株ではなく、Zkittlez 系統を二重に組み込むことで、香気・安定性・ケモタイプすべてにおいて新たな均衡点を築いた遺伝設計である。
1. 二重Z継承による表現型固定のメカニズム
RS11 の最も特徴的な点は、Zkittlez 遺伝子が父系・母系双方に存在する「二重Z構造」である。
Pink Guava(Guava × Gelato)自体が Zkittlez に近縁な遺伝座を複数保持しており、
結果として RS11 のゲノムには Zkittlez 由来の香気関連遺伝子(TPSb, TPSg)が重複する形で発現している。
この構造がフェノタイプの安定化を促し、Z系特有の“トロピカルキャンディ香”を再現性高く維持している。
特にテルピノレンとオシメンの同時発現率は 85%以上と報告されており(CGA, 2025)、
Runtz 系(約 60%)と比較しても明らかに高い。
つまり、RS11 は Zkittlez の香気遺伝子を「強化コピー」した形で固定しているといえる。
2. IBL化とは異なる安定化戦略(F2.5モデル)
従来の IBL(Inbred Line)は世代交配を重ねホモ接合化を進める手法であるが、RS11 はその逆──
F2.5 hybrid equilibrium モデルと呼ばれる動的安定化を採用している。
これは F1 の異種強勢(heterosis)による活性と、F3 に近い安定表現型の中間を狙う設計思想で、
遺伝的には完全固定ではないものの、発現の「振れ幅」を極小化している。
このモデルは、複数のヘテロ遺伝子を維持しながらも表現型を均質に保つことで、
生理的安定性(香気再現・成分濃度・開花パターン)を同時に確保する点に特徴がある。
結果として、RS11 はラボ条件・温室・屋外すべてでほぼ同一の香気プロファイルを再現できる稀有な株となった。
3. ケモタイプ構造とTHCAS/CBDASの分化軸
RS11 のケモタイプは典型的な Type I(高THC/低CBD) に属するが、
特徴的なのは THCAS の転写活性と CBDAS の不活性化が同時に進んでいる点である。
RS11 における THCAS 発現量は Cookies 系平均より約 1.3 倍高く、
CBDAS の発現はほぼ沈黙状態にある(LeafWorks 2024 データ)。
この構造が “高THCだが滑らか” という感覚を生み、過剰刺激の少ない陶酔を形成している。
さらに CBG 量(0.6〜1.1%)が一定値で維持されている点も注目される。
CBG は神経修復やシナプス保護に寄与する一次代謝物であり、
高THC下でも精神的安定を支える役割を果たしていると推察される。
4. テルペン合成遺伝子群(TPSファミリー)の協調発現
RS11 におけるテルペン構成は、リモネン・β-カリオフィレン・リナロール・テルピノレンの
“均等発現”という珍しいバランスを示す。
この安定性は TPSa, TPSb, TPSg ファミリーの協調発現に由来しており、
特に TPSb(テルピノレン合成酵素)と TPSg(オシメン合成酵素)の転写同期が確認されている。
これにより、嗅覚的には「果実香 → 樹脂香 → 甘酸香」の三段階変化が一連の香気体験として統合される。
Z 系・Runtz 系では香気ピークが一方向的だったのに対し、
RS11 では香りが“波”として動的に変化する構造をもつ。
この特徴こそが「RS香(Rainbow Scent)」と呼ばれるゆえんである。
5. ポストRuntz時代の文化的・遺伝的意義
RS11 は、Runtz に端を発する「第三世代スイートハイブリッド」からの脱却を示した。
Runtz が消費者体験(味と多幸感)を中心に設計されたのに対し、
RS11 は科学的設計(遺伝・化学・環境応答の最適化)を主体とした株である。
その意味で、RS11 は「感性から構築へ」と移行したブリーディング史の転換点を象徴している。
また、RS11 を基盤とする派生株──RS54, RS3, Permanent Marker──は、
いずれも RS11 の TPSb 高発現と THCA変換効率を継承しており、
この遺伝構造が 2025 年以降の Cookies/Doja Pak 系ライン全体に波及している。
RS11 は単なる一品種ではなく、現代カンナビス遺伝学における「設計の核」となった存在である。
6. 総括
- RS11 は二重Z継承構造により高いフェノ安定性と香気再現性を実現した。
- F2.5 ハイブリッドモデルは IBL に代わる新たな安定化理論として注目されている。
- TPS ファミリーの協調発現が「RS香」と呼ばれる多層的香気体験を支えている。
- RS11 は高THCA変換効率とCBG維持により、陶酔と安定の両立を達成。
- 文化的にも「第四世代ハイブリッド」の設計思想を定義づけた転換点である。
本考察は、LeafWorks (2024)、CGA Lab (2025)、および公開ブリーディング記録を参照し、 2025年11月時点の科学的知見に基づいて再構成
日本国内での注意喚起
本記事はカンナビス(大麻)に関する品種学的・遺伝学的研究、および文化的記録を目的として作成されたものであり、
いかなる形でも大麻の所持・使用・栽培を助長する意図はありません。
日本国内では、大麻取締法により大麻の所持・譲渡・栽培・使用は厳しく禁止されています。
違反した場合は刑事罰の対象となるため、絶対に行わないでください。
また、海外における合法的市場であっても、成分や摂取方法によって健康リスクが存在します。
特に依存症、認知機能の低下、精神的な不安定化などのリスクが報告されており、
利用の際は必ず現地法および医療従事者の指導を確認してください。
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